それでも生かされてる私

伴侶の突然死からの復活

桜は散り際が美しい。私もそう思う。

年ごとに桜はちがう。美しさが違う。

今年もまた桜が咲く、そう言う時期になった。


今でも瞳の奥に残像が甦えるのは

赤坂のHotelに泊まった時に見た桜。


夫の何度目かの裁判の公判に向かう朝だった。

私の情をすっかり裏切るようなそれは見事な姿で

ホテルを出る朝、敷地内にあった一本の桜は

“満を期して咲きました”とばかりにそこに佇んでいた。

周囲に人気はなく、はらり、はらりと花を散らせている

桜の下を通り、私は裁判所に向かった。