それでも生かされてる私

伴侶の突然死からの復活

ともだち

今日は春日和。


猫達は陽射しと共に移動している。

ひとりは翠の瞳とダブルコートの手触り

もうひとりは黒い艶やかな毛並みと金色の瞳で

私を慰めてくれる。


カーテン越しに差し込む光りは、ふたりの間を通り抜け、

新緑の匂いと外気のざわめきをも室内に呼び込み、

部屋の奥から傍観していても、つい誘われてしまう。

ベランダから見える庭の桜は満開だ。

薔薇が一輪咲いている。マダム ピエール オジェ。

オールドローズは苛酷な環境にも耐え丈夫。

自力で生きようとしている控え目な姿と優しい香りが愛おしい。

うつむいた花に顔を寄せると微かに揺れて、笑った。

生きていればこそ、の一瞬。

今年もありがとう・・・


年に一度の再会。 言葉にならない会話。

そのひと時を確かめ合うが、春の友達は足早に去って行く。


私からは何が去って行ったのか・・・・


私から離れていったもの。私が離してしまったもの。


ひとりが窓際から戻って来た。

日に何度も抱擁を求め、頬擦りするひとり。

喉を鳴らし、くり返し唄うひとり。

私の為に、私だけの為に。